Powder Coating Basics粉体塗装の種類と比較
粉体塗装の特長
POINT 1
固形分が100%で空気を媒体として用いるため有機溶剤による大気汚染・火災・中毒等の心配が有りません。
POINT 2
1コートで厚膜塗装が可能で、ピンホール・ワキ・タレなどの欠陥が生じにくいです。
POINT 3
従来の液状塗料のうように樹脂を有機溶剤に溶解する必要がないため比較的分子量の高い樹脂の利用が可能で、 樹脂の特性を生かした塗膜性能向上が可能です。
POINT 4
溶剤を使用しないため焼付時のセッティングの必要もなく、工程の短縮・合理化・自動化が可能です。
粉体塗装と液体塗装との一般的な比較
比較例 | 粉体塗装 | 液体塗装 |
---|---|---|
有機溶剤による大気汚染 | ○ | ✖ |
有機溶剤による火災 | ○ | ✖ |
有機溶剤による中毒 | ○ | ✖ |
塗料の回収 | 可 | 不可 |
塗装可能膜厚(1コート) | 30~500μm | 5~50μm |
厚膜化 | ○ | △ |
薄膜化 | △ | ○ |
調色精度 | △ | ○ |
エッジカバリング | ○ | △ |
自動化 | ◎ | ○ |
粉体塗料の種類現在市販されている粉体塗料は熱可塑性粉体塗料と熱硬化性粉体塗料に大別されます。
熱可塑性粉体塗料
熱可塑性粉体塗料は主に塩化ビニル系、ポリエエステル系、ナイロン系等の樹脂が使用されています。
熱可塑性塗料は、熱を加える事により軟化し形状を変化させ、冷えると形状が安定するという特徴を持ち、 熱による化学変化を伴わないため、再び熱を加えると軟化及び形状の変化が繰り返されます。
そのため、後加熱は必要ありませんが、一部では、後加熱を行う場合もあります。
しかし、これは平滑性を向上する為であり、熱硬化性塗料の様な焼成のための工程では有りません。
主に流動浸漬塗装法に使用されます。
熱硬化性粉体塗料
熱硬化性塗料は、熱を加える事により化学変化(架橋)を起し、特性が変化する塗料です。
架橋反応により各種の性能を付加させる事が可能な為、用途に応じた塗料を選択する事ができます。
一般的に後加熱を必要とし、焼成工程を追加します。
使用されるベース樹脂は、外装用としてポリエステル樹脂、 アクリル樹脂、又、内装用としてエポキシ樹脂、ハイブリッド(エポキシ/ポリエステル)樹脂が一般的となっています。
粉体塗装の主流で静電スプレー法によって塗装されます。
粉体塗料と液体塗料との一般的な比較
ベース樹脂 | エポキシ系 | ポリエステル系 | ナイロン系 | ポリエチレン系 | 塩ビ系 |
---|---|---|---|---|---|
焼付条件 | 130~200℃ 3~30分 | 160~230℃ 3~30分 | 170~210℃ 10~30分 | 160~200℃ 5~20分 | 200~210℃ 10分 |
塗装外観 | ○ | ◎ | ◎ | ○ | ▽ |
物理的性質 | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ |
科学的性質 | ◎ | ○ | ○ | △ | ◎ |
防食性 | ◎ | ▽ | ◎ | ○ | ○ |
汚染性 | ○ | ▽ | ○ | ○ | ▽ |
耐候性 | × | ○~◎ | ○ | △ | ○ |
静電塗装作業性 | ◎ | ◎ | ○ | ◎ | △ |
◎:秀 ○:優 ▽:良 △:可 ×:不可 ※塩ビ系は現代ではあまり使われていません。
被塗物によっては違いが発生します。塗装にはプライマーが必要な場合が有ります。
仕様について詳しくはお問い合わせください。
ベース樹脂ごとの比較現在市販されている粉体塗料は熱可塑性粉体塗料と熱硬化性粉体塗料に大別されます。
現在市販されている粉体塗料の種類と特性について、ベース樹脂ごとにご説明いたします。
前述の通り、粉体塗料は熱硬化性樹脂をベースとするタイプと、熱可塑性樹脂をベースとするタイプに大別されます。
一般に、熱硬化性樹脂粉体塗料は静電塗装法で、熱可塑性樹脂粉体塗料は流動浸漬法で使用されるケースが多いです。また、近年ではフッ素系樹脂や無機粉末(ホーロー)なども使用されています。
エポキシ樹脂系粉体塗料
ビスフェノールAのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂を使用した粉体塗料で、熱硬化性粉体塗料の中では最も歴史が古いものです。
静電粉体塗装法が開発されたことにより急速に実績を伸ばし、一般工業塗装関連分野のほぼ全分野で使用されています。
特に、水道関連資材を主とする 重防食分野で実績を伸ばしているものです。また自動車関連では、塩害対策仕様を中心にボディ(プライマー)、パーツの粉体化が進んでいます。
硬化剤としては、一般に、ジシアンジアミド系(置換型、促進型)が使用されていますが、この他、酸無水物系、二塩基酸ジヒドラジット類なども 一部使用されています。
最近では、硬化剤として末端にカルボキシル基を含有したポリエステル樹脂を使用した、 いわゆるエポキシポリエステルハイブリッド系粉体塗料が数多く使用されおり、汎用用途を中心にエポキシ系粉体塗料の中でメインになっています。また、耐熱性、架橋密度を上げるために、クレゾールノボラックエポキシ樹脂をブレンド使用する例があり、電気絶縁、電子材料関連分野で実績をあげています。
利点
- 耐食性、耐薬品性に優れている。
- 機械的性質に優れている。
- 電気絶縁性に優れている。
- 焼付温度のコントロールが容易で最も低温化が可能。更に後加熱を必要としないタイプもできる。
欠点
耐候性が悪く、屋外使用でチョーキングを起こす。
ポリエステル樹脂系粉体塗料
ポリエステル樹脂系粉体塗料は熱可塑性タイプでしたが、耐食性が悪いという問題がありました。
その後塗料メーカーの技術開発によって耐候性、耐食性、耐汚染性のバランスのとれた熱硬化性タイプの製造が可能になり、 建材、家電用途を中心に需要が増えてきています。
最近では、アクリル系に匹敵する耐汚染性を備えた塗料も作ることができ、また、塗膜の可とう性に優れているので後加工が可能です。かつ、レベリング性が良好であるので薄膜使用ができます。
更に、高温短時間硬化も可能であり、コスト性能のバランスがとれているので今後の展開が期待される塗料です。
利点
- 耐食性、耐薬品性に優れている。
- 機械的性質に優れている。
- 電気絶縁性に優れている。
- 焼付温度のコントロールが容易で最も低温化が可能。更に後加熱を必要としないタイプもできる。
欠点
塗膜硬度がやや低い。
ナイロン樹脂系粉体塗料
粉体塗装用としてはナイロン11、ナイロン12の実績があります。
静電用と流浸用がありますが、現在では流浸用の実績が多くなっています。
ナイロンは、非常に優れた性能を具備しているのですが、塗料単価が高いというコスト面の制約があり、ナイロンとしての機能を要求する用途、例えば自動車部品、給水タンクパネルなど住宅設備、バルブなどを中心に実績があります。
最近では、耐熱水性の良いグレード、異種パウダーの混入に対するハジキ性を改良した品種が開発されています。
利点
- 耐候性に優れている。
- 耐水性に優れている。
- 耐衝撃性に優れている。
- 耐摩耗性に優れている。
欠点
- プライマーが必要である。
- コストがかかる。
ナイロン塗装についてさらに詳しく見る
当社のナイロン塗料は、フランスARKEMA社製 Rilsan®Fine Powder(以下リルサンパウダー)という熱可塑性ポリアミド11パウダーで、一般的にナイロン11と呼ばれるものを使用しております。
リルサンパウダーは、約50年前に開発され、石油系原料のナイロン12とは違い、植物由来物質のヒマシ油を原料とする環境に配慮した塗料です。また、揮発性有機化合物や重金属系顔料、有害な硬化剤等も含みません。パウダーの製造方法も特殊で、その形状は球状であり、粒度分布も安定しています。
塗膜物性に関して、ナイロン11は融点が186℃と高く、次の優れた特性を持ちます。
特性
耐熱性、耐候性、耐紫外線性、表面平滑性、耐摩耗性、耐キャビテーション性、耐薬品性、耐アルカリ性、耐衝撃性、耐屈曲性ほか当社では、このリルサンパウダーとプライマーを使用し、主に流動浸漬法にて塗装を行ないます(一部静電塗装法採用)。
ポリエチレン樹脂系粉体塗料
ポリエチレン樹脂は、粉体塗料の中で最も歴史が古いタイプです。
粉体塗料の中では塗料単価が比較的安いために、種々の用途で使用実績があります。
熱可塑牲粉体塗料の中では最も使用実績が多くなっています。
低密度ポリエチレンが主流ですが、一部高密度ポリエチレンも使用されています。
一般に耐候性が悪いため屋外用途に使用されることは少なく、線材の被覆が多く、家電製品、自転車の付属品などの用途が主となっています。
静電塗装法で使用されるケースは少なく、ほぼ全量が流動浸漬法で使用されています。
最近では自己密着型のポリエチレン系粉体塗料が開発されています。
利点
- 耐薬品性に優れている。
- 耐寒性に優れている。
- 耐折り曲げ性に優れている。
欠点
- 金属との密着性が低い。
- 耐候性に劣る。(黒色は耐候性良好)
各ベース樹脂ごとの性能比較表
項目 | 試験方法 | エポキシ | ポリエチレン | ナイロン |
---|---|---|---|---|
膜圧 | 電磁微厚計 μ | 200~300 | 200~500 | 200~300 |
光沢 | 60度鏡面反射率 % | 40~95 | 50~70 | 40~60 |
エリクセン | エリクセン試験器 mm | >5 | >7 | >7 |
耐衝撃性 | デュポン式1/2"φ×1kg cm | 50 | 50 | 50 |
密着性 | 2mm角ゴパン目 | 100/100 | 100/100 | 100/100 |
折り曲げ性 | mmφ | 3 | 3 | 3 |
硬度 | 鉛筆硬度 | 2H~3H | 6B~4B | B~F |
引張強度 | kg/cm2 | 400~600 | 200~300 | 600~800 |
伸び率 | % | 4~6 | 200~400 | 200~400 |
耐摩擦性 | テーバー式CS17 1kg 1,000回 mg | 20~40 | 5~10 | 5~10 |
吸水率 | ASTM D-570 % | 0.05~0.1 | <0.01 | 0.5~1.5 |
体積固有抵抗 | ASTM D-257 Ω・cm | 1015~16 | 1015~16 | 1014~15 |
耐電圧 | ASTM D-149 K .V ./mm | 15~35 | 15~30 | 25~40 |
耐水性 | 40℃ 2,000H度 | ○ | ○ | ○ |
耐沸水性 | >40H | 8H | >30H | |
耐食塩水性 | 5% NaCl 1年 | ○ | ○ | ○ |
ソルトスプレー | ASTM B-117 1,000H | ○ | ○ | ○ |
耐アルカリ性 | 5% NaOH 1ヶ月 | ○ | ○ | ○ |
耐酸性 | 5% H2SO4 | ○ | ○ | ○ |
耐ガソリン製 | 48H | ○ | ○ | ○ |
耐汚染性 | マジックインキ | ○ | △ | △ |
性耐候性 | 屋外暴露 1年 | ×(チョーキング) | ○ | ○ |
塗装方法の種類
当社で実施している塗装法
粉体塗装には様々な方法がありますが、当社で主に採用しているのは静電吹付法と流動浸漬法です。
静電吹付法は、塗料の無駄を減らし、均一な膜厚を得られるうえ、複雑な形状の被塗物にも効果的に塗装できます。
一方、流動浸漬法は厚膜塗装が容易で均一に仕上げられ、大量生産に適しているため作業効率が高いです。
そのため、当社ではこれら2種類の塗装方法を主に採用しています。
静電吹付法
高電圧で帯電させた粉体塗料を静電引力で被塗物に付着させる方法です。
粉体は供給槽から空気でスプレーガンに送り、高電圧で帯電させます。すると、アースされた被塗物とガンの間に電界ができ、粉体は静電引力で被塗物に付着します。
塗膜が厚くなると静電反発が起こり、それ以上粉体が付かなくなるため、均一な膜厚が得られます。





流動浸漬法
予熱した被塗物を粉体槽に浸漬し、粉体を付着・溶融させる方法です。
流動浸漬法は、空気で粉体を浮かせた槽に、あらかじめ温めた被塗物を浸すことで、粉体を付着・溶かして塗膜を作る方法です。
設備が安価で厚い塗膜を簡単に作れますが、被塗物のサイズや形に制限があり、事前の予熱も必要です。




粉体塗装が可能な被塗物の条件
粉体塗装が可能な被塗物の条件
被塗装対象物は様々な形状・大きさ・素材に対応いたします。
塗膜の厚さもうっすらかぶる程度から1000μm以上までご要望、ご使用用途に応じて ご対応いたします。
ただし、被塗物には下記の条件がございます。
CHECKPOINTS 1
粉体塗装は塗装前の予熱工程又は塗装後の焼成工程又は塗装前後双方で150~300℃の高温焼き付け処理を行います。
そのため被塗物の素材がこの高温に耐える必要があります。
従って被塗物の素材としては主に金属類となります。
しかし特殊な塗装方法の利用により、陶器やガラスなどの無機物や高温耐熱性を有するプラスチックスなどにも粉体塗装は可能です。
CHECKPOINTS 2
粉体塗装には、主として静電粉体塗装法と流動浸漬法の2種類があります。
その一方の静電粉体塗装法を行う場合には、被塗物の素材が一定値以上の通電性を有する必要があります。
金属類であれば問題はありませんが、その他の素材の場合には注意が必要です。(流動浸漬法の場合は問題ありません)
CHECKPOINTS 3
粉体塗装は各工程とも専用の塗装設備を使用して行います。
そのため使用する塗装設備の大きさ(能力、規模)により、塗装可能な被塗物の大きさ(長さ、巾、高さ、重さなど)が限定されます。
大型の鋼構造物や屋外タンクなど大型の被塗物の場合には粉体塗装が出来ない場合がありますので注意が必要です。
当社での粉体塗装が可能な被塗物の最大値は、長さ 4500m/m× 幅 2700m/m× 高さ 2300m/m 重さ6000kg までです。
CHECKPOINTS 4
一般の粉体塗装では被塗物の内面の塗装は困難です。
例えばタンクや容器の内面や細いパイプの内面などの塗装には問題となる場合があります。
詳しくはお問い合わせください。
粉体塗装の欠点・利点
欠点
- 被塗物が制限される。
- 色調変更に時間がかかる。
- 現場施工ができない。等があげられます。
利点
一方、利点としては下記があげられます
CHECKPOINTS 1
高品質で被覆性に富んだ塗膜粉体塗装による完成塗膜は、塗料に使用される高分子樹脂の特性により高膜厚で優れた塗膜強度、耐化学薬品性、耐食性、 耐候性を保持します。
粉体塗料は 1 回の塗装で 30 ~ 150μm の膜厚が自由に得られます。
また予熱方法を採れば 300 ~ 1000μm高厚膜の塗装が可能となります。
また 25 ~ 35μm の薄膜塗装も設計上可能です。
CHECKPOINTS 2
環境にやさしい抵公害性の塗装方法で、有機溶剤を全く使用しないため、塗装作業時における大気汚染、火災、中毒などの危険性が大幅に減少します。
CHECKPOINTS 3
粉体塗装で使用される塗料は、塗料のロスを減らし、コスト削減、塗膜性能、環境対応、塗装作業性、安全性など、溶剤塗装で使用される塗料より優れた 回収再利用 ( リサイクル ) が可能です。
粉体塗装 ( パウダーコーティング ) は有機溶剤を全く使用しないことで、オーバースプレーされた塗料の回収再利用 ( リサイクル ) が可能となるため塗料のロスが激減します。
CHECKPOINTS 4
省力化、合理化が容易で、塗装ラインの小型化、PRTR 届出に非該当、非危険物、作業者の熟練、塗料調整の不要というように塗装作業性が大変優れています。
静電塗装機の塗料排出量が大きく、一般溶剤型塗料に比較して 3 ~ 5 倍の塗装能力があるため、塗装ラインの小型化、自動化が容易になります。
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